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主宰者挨拶

原典研究所主宰 齋藤 瀛涯


原典研究所は、内外の古典の独習に挑みながら、全くの独力では越えがたい語学上の難所で挫折を余儀なくされている方々のために、「原文の読解力涵養」を目的とした各種の研究会を催す場として創設されたものであります。

現今の語学教育は、「国際化」と「言語の運用力向上」を錦の御旗に、実地の生活体験と日常会話の流暢性のみをことさらに重視する「実用主義的」傾向に偏し、学習者の多くを、日本語および日本文化についての素養を著しく欠いた、いわば「無国籍的」な存在たらしめる一因となっております。

またその教材の如きも、文体・内容ともに日常卑近の陳腐な文を競って採り上げる結果、日本語話者として成熟し、とりわけ心の糧としても諸原典の読解に志す独習者には、迂遠にして読むに耐えないものも少なくありません。

他方、主要な近代諸語・古典諸語のいずれについても、近年優れた辞書・文法書の刊行が内外に相次いでいるにも拘らず、言語的能力の極度の減衰によって、それらの恩恵に一切与かることのできない人々が増えつつあります。

原典研究所は、かかる趨勢に鑑み、想像力の欠如した制度的語学とは袂を分かち、古典を愛する読書子のためにあえて「諸言語の訓読」に徹する旨を明らかにし、同行の士のご参加を募るべく、茲に謹んでご挨拶申し上げます。

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